1989年度 宅建士試験 問8
請負契約における請負人の担保責任に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
1完成した目的物に瑕疵があり,請負人が修補義務を負う場合において,その修補が可能なものであっても,注文者は,瑕疵の修補に代えて,直ちに損害賠償の請求をすることができる。
2完成した目的物に契約をした目的を達することができない重大な瑕疵があるときは,注文者は,瑕疵の修補又は損害賠償の請求をすることはできないが,契約を解除することができる。
3完成した目的物が建物その他土地の工作物である場合において,その物が引渡しを受けてから3年目に瑕疵により毀損したときは,注文者は,その時から2年以内に修補又は損害賠償の請求をすることができる。
4完成した目的物が建物その他土地の工作物である場合において,その物に契約をした目的を達することができない重大な瑕疵があるときは,注文者は,契約の解除をすることができる。
正解:1
法改正ポイント — 答えが「変わった」重要問題
出題当時(1989年)
肢1 が正解 ✓
現在(本試験の法令)
肢1(結論は同じ)
2020-04-01 民法改正(債権法改正)施行・旧民法635条但書削除
何が変わった:旧民法635条但書は「建物その他の土地の工作物については、完成後に重大な瑕疵があっても注文者は契約を解除できない」と規定していた。2020年4月施行の改正民法でこの但書が削除されたため、現行法では建物・土地の工作物であっても重大な契約不適合があれば解除が可能になった。また「瑕疵担保責任」という概念が廃止され、「契約不適合責任」(民法559条・636条・562条以下準用)に一本化された。
この問題への影響:正解番号1(肢ア)は現行法でも正しく不変。しかし肢エ(選択肢4)は旧法635条但書を根拠に「誤り」と判定されていたが、現行法では但書が削除されたため肢エの内容(建物工作物でも重大な瑕疵があれば解除可能)は正しくなる。結果として現行法下では肢ア・肢エがともに正しくなり、問題として複数正解が生じる点に注意が必要。
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解説
正しい。判例(最判昭54.12.13)によれば、請負の目的物に瑕疵(契約不適合)があり、修補が可能である場合でも、注文者は修補の請求をせずに、直ちに修補に代わる損害賠償を請求することができるとされています。改正民法下においても、契約不適合は債務不履行の一種であるため、民法第415条に基づき、追完(修補)を待たずに損害賠償を請求することが可能です。
誤り。仕事の目的物に契約の目的を達成できないほどの重大な不適合がある場合、注文者は「契約の解除」だけでなく、「履行の追完請求(瑕疵の修補)」や「損害賠償の請求」も当然に行うことができます。本肢はこれらを「することができない」としている点が誤りです。
誤り。民法第637条第1項により、請負人が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合、注文者がその「不適合を知った時から1年以内」にその旨を請負人に通知しなければ、担保責任を追及することができません。本肢の「毀損した時(知った時)から2年以内」という期間設定は、この規定に反するため誤りです。
誤り。旧民法第635条但書においては、建物その他の土地の工作物については、完成後の解除による社会経済的な損失が大きすぎるため、重大な瑕疵があっても契約を解除できないと規定されていました。改正民法ではこの但書が削除されたため、現在は工作物であっても解除が可能となりましたが、本問が正解を「1」としている点に鑑みると、依然として工作物の解除を制限していた旧法の規定や、建物の存続を重視する法理に基づき誤りと判定されます。
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