1999年度 宅建士試験 問9
正解:4
解説
<p><strong>選択肢1:</strong>正しい。民法715条1項の「事業の執行について」の解釈に関し、判例は「外形標準説」を採用しています。たとえ被用者の行為が本来の職務権限の範囲外であっても、その行為の外形から判断して、あたかも職務の範囲内であるかのように見える場合には、被害者保護の観点から「事業の執行につき」なされたものとみなされ、使用者は責任を負うことがあります。</p>
<p><strong>選択肢2:</strong>正しい。判例によれば、外形標準説(選択肢1参照)を適用して使用者が責任を負う場合であっても、被害者が「被用者の行為が職務権限外であること」を知っていた(悪意)、または重大な過失によって知らなかった場合には、使用者は責任を負わないとされています。被害者に重過失がある場合まで保護する必要はないという趣旨です。</p>
<p><strong>選択肢3:</strong>正しい。使用者と被用者の損害賠償義務は、いわゆる「不真正連帯債務」の関係にあります。不真正連帯債務において、一方の債務者に生じた事由は、弁済など債権を満足させるものを除き、他方の債務者には影響を及ぼさない(相対的効力)とされています。判例(最判令和2.2.27)も、被用者の債務が消滅時効にかかったとしても、使用者の賠償義務が消滅することはないと判示しています。</p>
<p><strong>選択肢4:</strong>誤り。民法715条3項は、損害を賠償した使用者から被用者への求償権(肩代わりした分を返せと言える権利)を認めています。この求償権の行使にあたり、法律上「被用者に故意又は重大な過失があること」という要件は規定されていません。判例(最判昭和51.7.8)では、事業の性格や規模、被用者の職務内容などを考慮し、「信義則上相当と認められる限度」において求償が可能とされていますが、軽過失であっても求償自体は可能です。したがって、「故意又は重大な過失があったときでなければ求償できない」とする本肢は誤りです。</p>
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