宅建合格ナビ2026
権利関係

2021年度(10月試験) 宅建士試験 問1

次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。(判決文)賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解すべく、したがつて、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解するのが相当であり、このことは、賃貸借の終了原因が解除(解約)による場合であつても異なるところはないと解すべきである。
1賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はない。
2賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものといえる。
3賃貸借における敷金は、賃貸借の終了時点までに生じた債権を担保するものであって、賃貸人は、賃貸借終了後賃借人の家屋の明渡しまでに生じた債権を敷金から控除することはできない。
4賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合する。

正解:1

解説

1 判決文によれば、賃借人の家屋明渡債務は賃貸人の敷金返還債務に先立ち履行されるべきものであり、両債務間に同時履行の関係はないと解されている。留置権(民法295条1項)が成立するためには、その物に関して生じた債権(被担保債権)と目的物との間に牽連性が認められる必要がある。しかし、敷金返還請求権は、家屋の明渡し後に発生するものであり、家屋そのものに関して生じた債権とは言えないため、家屋との牽連性が認められない。したがって、賃借人は敷金返還請求権を被担保債権として家屋について留置権を取得する余地はない。

2 双務契約とは、契約当事者双方が互いに対価的な意味を持つ債務を負担する契約である。賃貸借契約自体は双務契約であるが、賃貸借契約に付随して締結される敷金契約は、賃貸借契約とは別個の契約であると解されることが多い。判決文においても、家屋明渡債務と敷金返還債務は同時履行の関係に立たないとされており、これは両者が一個の双務契約から生じた厳密な意味での対価的な債務関係ではないことを示唆している。敷金返還債務は、賃貸借契約から派生するものの、その発生条件(明渡し及び債務控除後)や性質が典型的な双務契約の対価債務とは異なるため、「1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にある」という記述は適切ではないため誤りである。

3 民法622条の2第1項によれば、賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を敷金から控除することができる。この「賃貸借に基づいて生じた債務」には、賃貸借契約終了後、目的物の明渡し完了時までに生じる未払賃料や損害賠償金(原状回復費用、明渡し遅延による損害金等を含む)も含まれると解されている。したがって、賃貸人は、賃貸借終了後、賃借人の家屋明渡しまでに生じた債権を敷金から控除することができる。よって、「控除することはできない」とする記述は誤りである。

4 判決文は、家屋明渡債務と敷金返還債務が同時履行の関係に立たないと明確に述べている。敷金が「家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保する」という性質を持つのは、まさに明渡しが先に行われ、その後に原状回復費用等を確定させて敷金から控除・精算するという流れを前提としているためである。もし両債務が同時履行の関係にあるとすれば、賃借人は敷金が返還されるまで明渡しを拒むことができ、敷金の担保的機能を十分に果たせなくなる可能性がある。したがって、両債務間に同時履行の関係を肯定することは、敷金の性質に適合しない。よって、「敷金の性質にも適合する」という記述は誤りである。

同じ論点をもっと解く・AIチューターの解説を見るなら

無料登録してすべての過去問を解く