2021年度(10月試験) 宅建士試験 問10
正解:2
解説
1 債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まる場合(選択債権)、その選択権は、特段の合意がなければ債務者に属する(民法406条)。本件契約では美術品甲又は乙を引き渡す債務を負うAが債務者、代金を支払うBが債権者である。契約で第三者Cを選択権者とする合意がなされた場合、選択はCが行う(民法409条1項)。しかし、その第三者Cが選択をすることができず、又は選択をしないときは、選択権は債務者(本問ではA)に移転する(同条2項)。したがって、Cが選択できない場合、選択権は債務者であるAに移転する。「選択権はBに移転する」という記述は誤りである。
2 選択債権の目的である給付の中に、初めから不能のもの、又は後に不能となったものがあるときは、債権は、その残存するものについて存在する(民法410条本文)。この規定は、選択権を有する者の過失によって給付が不能となったときには適用されないとされている(同条ただし書)が、判例・通説では、選択権者の過失による不能の場合であっても、債権は残存するものに特定されると解釈運用されている(結果として本文と同様の扱いになる)。本問では、選択権を有する債務者Aの過失(失火)により甲が履行不能(全焼)となったため、債権は残存する乙について存在する(特定される)。したがって、「給付の目的物は乙となる」という記述は正しい。
3 債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるとき(選択債権)は、その選択権は、別段の定め(特約)がない限り、債務者に属する(民法406条)。本件契約においては、美術品を引き渡す義務を負うAが債務者、代金を支払い美術品を受け取る権利を持つBが債権者である。特段の合意がない場合、選択権は債務者であるAに属する。「Bが選択権者となる」という記述は誤りである。
4 選択債権において、第三者が選択権を有するものと定められた場合、その選択は、その第三者が債権者又は債務者のいずれか一方に対する意思表示によってする(民法409条1項)。したがって、第三者Dは、債権者B又は債務者Aのどちらか一方に意思表示をすれば足り、両者に対して意思表示をする必要はない。「AとBの両者に対して意思表示をしなければならない」という記述は誤りである。
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