2021年度(12月試験) 宅建士試験 問4
いずれも宅地建物取引業者ではない売主Aと買主Bとの間で令和6年7月1日に締結した売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1BがAに対して手付を交付した場合、Aは、目的物を引き渡すまではいつでも、手付の倍額を現実に提供して売買契約を解除することができる。
2売買契約の締結と同時に、Aが目的物を買い戻すことができる旨の特約をする場合、買戻しについての期間の合意をしなければ、買戻しの特約自体が無効となる。
3Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。
4目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた場合には、当該不適合に関する請求権が消滅時効にかかっていない限り、BはAの担保責任を追及することができる。
正解:4
法改正ポイント — 答えが「変わった」重要問題
出題当時(2021年)
肢d が正解 ✓
現在(本試験の法令)
肢d(結論は同じ)
2020-04-01 令和2年民法改正(債権法改正)
何が変わった:旧民法562条2項(他人物売買における善意の売主の解除権)が削除された。旧法では、売主が目的物が他人の物と知らずに売買契約を結び、その権利を買主に移転できない場合、善意の売主は損害賠償なしに契約を解除できた(旧562条2項)。改正後はこの規定が廃止され、善意の売主は一方的に解除できなくなった。同時に「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に名称・枠組みが変更され、民法566条により悪意の売主には1年の通知期間制限が適用されないことが明文化された。
この問題への影響:正解dは現行法でも成立する(民法566条ただし書・悪意売主への通知期間制限不適用)。誤肢cの誤りの根拠が旧法廃止に直結する点が重要:旧民法562条2項では善意の売主は「損害を賠償しないで」契約を解除できたため、旧法下では肢cは正しい記述となる。令和2年改正により旧562条が削除されたため、肢cは現行法で明確に誤り。正解番号dは改正前後で不変だが、誤肢cの誤りの理由が法改正に直結しており、受験生が理解すべき改正ポイントである。
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解説
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができます(民法557条1項本文)。ただし、この手付解除ができるのは、相手方が契約の履行に着手するまでです(同項ただし書)。「契約の履行に着手」とは、客観的に外部から認識しうるような形で契約の履行行為の一部を行い、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合をいいます。売主Aが手付解除できるのは、買主Bが履行に着手する前までであり、Bが代金の一部または全部を支払うなど履行に着手した後は、たとえ目的物を引き渡す前であっても、Aは手付解除をすることはできません。したがって、「目的物を引き渡すまではいつでも」解除できるわけではないため、本記述は誤りです。
不動産の売買契約と同時にされた買戻しの特約は、売主が買主の支払った代金(別段の合意がある場合を除く)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができるというものです(民法579条)。買戻しの期間は10年を超えることができず、これより長い期間を定めたときは10年に短縮されます(民法580条1項、2項)。そして、買戻しについて期間を定めなかったときは、その期間は5年とされます(同条3項)。したがって、買戻しについて期間の合意をしなくても特約自体は有効であり、期間は5年となります。「買戻しの特約自体が無効となる」という記述は誤りです。
他人の権利を売買の目的とした場合であっても、その売買契約は有効です。この場合、売主Aは、その権利を取得して買主Bに移転する義務を負います(民法561条)。もし売主Aがこの権利移転義務を履行できない場合、例えば目的物が第三者Cの所有物であり、Cから所有権を取得してBに移転できないときは、債務不履行となります。買主Bは、売主Aの帰責事由の有無にかかわらず契約の解除ができ(民法541条、542条)、帰責事由があれば損害賠償請求もできます(民法415条)。一方、売主Aが契約締結時に目的物が他人の物であることを知らなかった(善意)場合であっても、原則としてAから一方的に契約を解除することはできません。民法改正(令和2年4月1日施行)により、善意の売主の解除権を定めていた旧民法562条は削除されました。したがって、「Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる」という記述は誤りです。
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができません(民法566条本文)。これが原則的な権利行使の期間制限(通知期間)です。しかし、売主が引渡しの時にその不適合を知り(悪意)、又は重大な過失によって知らなかったときは、この1年の通知期間の制限は適用されません(同条ただし書)。したがって、売主Aが引渡しの時点で目的物の品質に関する契約不適合を知っていた(悪意の)場合には、買主Bは1年以内に通知しなくても、担保責任(契約不適合責任)に基づく請求権が別途、消滅時効(権利を行使することができることを知った時から5年間又は権利を行使することができる時から10年間。民法166条)にかかっていない限り、Aの担保責任を追及することができます。本記述は正しいです。
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