仲介手数料は「業者が自由に決めてよい金額」ではない。宅地建物取引業法第46条は、宅建業者が売買・交換・貸借の代理または媒介に関して受け取れる報酬の額に上限を設け、これを超えて受け取ることを禁じている。売買と貸借で計算の考え方が異なり、消費税の扱いや近年新設された特例まで含めると、数字が絡む頻出論点として得点源になる分野である。ここでは告示にもとづく上限の仕組みを整理する。
宅建業法第46条が定める4段構成
第46条は次の4項からなる。
- 第1項:報酬額は国土交通大臣の定めるところによる
- 第2項:業者はその額を超えて報酬を受けてはならない
- 第3項:大臣は報酬額を定めたときはこれを告示しなければならない
- 第4項:業者は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、定められた報酬額を掲示しなければならない
つまり「上限は大臣が告示で定める→業者はそれを超えられない→事務所に掲示する義務がある」という一連の仕組みが条文にそのまま示されている。具体的な料率や倍率は、この告示(昭和45年建設省告示第1552号、直近改正は令和6年6月21日国土交通省告示第949号・同年7月1日施行)で定められている。
売買・交換の媒介報酬 — 区分ごとの料率を合算する
売買・交換の媒介で、課税事業者である宅建業者が依頼者の一方から受けられる報酬額(消費税等相当額を含む)は、代金額(税抜)を次の3区分に分け、それぞれの料率を掛けた金額を合算した額が上限となる。
- 200万円以下の部分:5.5%
- 200万円超400万円以下の部分:4.4%
- 400万円超の部分:3.3%
いわゆる「速算式」は、この階段状の料率構造を簡便に計算するための考え方だが、告示本文はあくまで区分ごとの料率を積み上げる形で示されている点を押さえておきたい。代金額が大きくなるほど適用される料率が段階的に下がっていく構造であることが、この論点の理解の核になる。
代理報酬は媒介の2倍が上限
売買・交換の代理報酬は、上記の媒介の計算方法で算出した額の2倍以内とされている。ただし、代理業者が取引の相手方からも報酬を受け取る場合は、依頼者から受ける額との合計が、この2倍の上限を超えてはならない。媒介と代理で上限の考え方が異なる点、そして代理であっても「依頼者+相手方」の合計に上限がかかる点は、対比構造として狙われやすい。
貸借の媒介報酬 — 一方から受ける額と双方合計で上限が違う
貸借の媒介では、依頼者の双方から受けられる報酬の合計額(消費税等相当額を含む)は、借賃(税抜)1か月分の1.1倍に相当する金額以内とされている。
さらに居住用建物の賃貸借では、媒介依頼を受ける際に当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、依頼者の一方から受けられる額は借賃1か月分の0.55倍に相当する金額以内という制限が別途かかる。つまり「双方合計の上限」と「居住用建物で一方から受ける場合の上限」は別枠であり、原則として一方だけからは家賃の半分相当までしか受け取れない仕組みになっている。貸借の代理報酬についても、依頼者から受けられる額は借賃1か月分の1.1倍相当が上限である。
消費税の扱いと近年の特例
告示が示す報酬額の上限は、いずれも消費税等相当額(消費税額および地方消費税額に相当する額)を含んだ金額である点に注意したい。代金・借賃自体は税抜ベースで計算し、算出した報酬額に消費税等相当額を含める、という構造になっている。なお免税事業者である宅建業者が受けられる報酬額は、通常の規定に準じて算出した額に110分の100を乗じた額に、当該媒介における仕入れに係る消費税等相当額および依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額を加えた金額以内とされている。免税事業者は、報酬本体に消費税相当額(10%)をそのまま上乗せすることはできない点に注意したい。
また令和6年7月施行の改正により、代金額(税抜)800万円以下の宅地・建物の売買・交換の媒介では、媒介に要する費用を勘案して通常の計算額を超えて報酬を受けられるが、依頼者から受ける額は30万円の1.1倍(33万円)相当を超えてはならないという特例が設けられた(代理はこの2倍以内)。あわせて、長期間使用されておらず、または将来にわたり利用の見込みがない空家等の貸借媒介では、条件付きで借賃1か月分の2.2倍まで報酬を受けられる特例も新設されている。空き家問題を背景にした改正として、近年の実務論点でもある。
まとめ
報酬額の制限は、条文の骨格(告示による上限・超過禁止・掲示義務)と、具体的な数字(売買5.5%/4.4%/3.3%、代理は2倍、貸借は双方合計1.1倍・居住用建物で一方0.55倍、低廉な空家等33万円、長期空家等の貸借2.2倍)をセットで覚えることが有効である。特に「媒介と代理の違い」「貸借で一方と双方の上限が異なる点」は対比で問われやすいため、数字だけでなく「なぜその区分があるのか」という考え方まで整理しておくと、宅建合格ナビ2026での学習でも本試験でも取りこぼしを防ぎやすい。


