仕事と両立しながら宅建士試験に挑む社会人にとって、まとまった学習時間の確保は大きな壁です。本記事では、通勤・スキマ時間を活かしながら、記憶に残りやすいとされる「間隔反復」の考え方を学習計画に取り入れるヒントを紹介します。
「忘却曲線」は正しく理解すると使い方が変わる
学習法を調べると必ず目にする「エビングハウスの忘却曲線」。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、意味のない音節を暗記する実験を通じて、時間が経つと再び覚え直すのにどれだけ時間がかかるかを「節約率」という指標で示しました。節約率とは「記憶がどれだけ残っているか(保持率)」ではなく、「もう一度覚え直す際に、最初と比べてどれだけ時間や労力を節約できたか」を表す数値です。
ネット上では「20分後に○%忘れる」といった具体的な数字がよく紹介されますが、これは元の実験対象である無意味な音節についての結果であり、宅建士試験のように意味のある知識の学習にそのまま当てはめられる数値ではないという指摘が複数の学習系メディアでなされています。大切なのは正確なパーセンテージを覚えることではなく、「時間が経つと記憶は薄れていく。だからこそ、復習のタイミングを工夫する意味がある」という考え方を学習計画に活かすことです。
「間隔をあけた復習」が記憶定着に有利という研究知見
学習した内容を一度にまとめて復習する「集中学習」と、時間を空けて何度も繰り返す「分散学習(間隔反復)」を比較する研究は、心理学の分野で数多く行われてきました。代表的なものが、Cepeda, Pashler, Vul, Wixted, & Rohrerが2006年に学術誌『Psychological Bulletin』に発表した大規模なメタ分析です。317の実験・839件の測定結果を統合したこの研究では、学習の間隔と「どれだけ長くその知識を覚えておきたいか」が密接に関係しており、復習のタイミングは目的に応じて調整すべきだという知見が示されました。
また、2025年に公表された教室学習を対象にした分散学習効果のメタ分析でも、中程度の効果があったと報告されており、「間隔をあけて復習したほうが、詰め込みよりも記憶に残りやすい」という傾向は、複数の研究で繰り返し確認されている一般的な学習理論だと言えます。宅建士試験に当てはめれば、「一度にまとめて覚えて終わり」にせず、同じ論点に日をおいて何度も触れる設計を意識すると良いでしょう。
通勤・スキマ時間は間隔反復と相性が良い
分散学習の考え方のポイントは、「短時間の学習を、間隔をあけて複数回繰り返す」ことです。これはまとまった学習時間を作りにくい社会人受験生にとって、むしろ好都合な条件でもあります。通勤電車の中、昼休み、就寝前の10分など、1回あたりは短くても、1日のうち複数のタイミングで同じ論点に触れる機会を作れれば、それ自体が間隔反復のサイクルになるからです。
具体的には、次のような工夫が考えられます。
- 朝の通勤で新しい論点をインプットし、帰りの通勤で同じ論点を軽く復習する
- スマートフォンなどで、一問一答形式の問題を細切れの時間に解く
- 「今日やった内容」を数日後・1週間後にもう一度見返すタイミングをあらかじめ決めておく
なお、「1日後→3日後→1週間後→1か月後」のように具体的な復習タイミングを紹介する学習法の記事も見られますが、これはあくまで実践的な目安として紹介されているものであり、万人に当てはまる最適値として確立されているわけではありません。自分の生活リズムに合わせて、無理なく続けられる間隔を見つけることが重要です。
参考として、ある社会人向け資格試験の受験者アンケート(2013年実施)では、「通勤時間に勉強している」「スマートフォンやタブレットを学習に利用している」と回答した人が多数を占めたという結果もあります。調査対象は宅建士試験とは異なる資格の受験者ですが、通勤・スキマ時間を学習に組み込む発想自体は、多くの社会人受験生にとって参考になる工夫と言えるでしょう。
モチベーションを保つための工夫
同じアンケートでは、「記憶の定着が大変」「モチベーションの維持が難しい」と感じている社会人受験生が多いという結果も見られました。仕事と学習の両立では、学習内容そのものだけでなく、継続する仕組み作りも重要なテーマです。
一般的に紹介される工夫としては、次のようなものがあります。
- 学習の進捗を記録し、「今日はここまでできた」を可視化する
- 1回の学習を細かい単位に区切り、小さな達成感を積み重ねる
- 復習のタイミングをカレンダーやアプリで管理し、「思い出す」負担を減らす
これらはいずれも学術的に効果が保証されたものというより、多くの学習法解説で紹介される一般的な工夫です。自分に合った方法を試しながら、無理のない形で習慣化していくことが、働きながらの学習を続けるうえでのポイントになります。
まとめ
- 「忘却曲線」でよく見る具体的な数値は、無意味な音節を対象にした実験の「節約率」であり、宅建士試験の学習にそのまま当てはめられる数値ではない
- 間隔をあけて繰り返し復習する「分散学習」は、集中学習と比べて記憶定着に有利な傾向があることが、複数の学術研究(メタ分析)で示されている
- 通勤時間などのスキマ時間は、1回は短くても複数回同じ論点に触れる機会を作りやすく、間隔反復の考え方と相性が良い
- 復習タイミングの目安や継続の工夫は、あくまで一般的に紹介されるものとして参考にしつつ、自分の生活リズムに合わせて調整することが大切
宅建合格ナビ2026では、こうした学習の考え方を踏まえながら、日々の学習を無理なく継続できるようサポートしていきます。


